第5章 迷宮・ザガン
ぼんやりとしている内に船は港へ到着して。
私達は順に船を下りる。
その際、どうしても私は白龍さんを意識してしまって……気が削がれていた。
そのせいで人とぶつかって。
「あ……ごめんなさい」
そう言うとぶつかってしまった女の人は何も言わずに去っていく。
綺麗な人だったな。後姿を見ながらそう考えていると……私達の前に一人の女の子が現れる。
そして、自分も迷宮に連れて行ってほしいと懇願するのだった。
――――
理由を聞いた私達は皆一様に黙り込んでしまう。
両親を助けたいというこの子の気持ちは分かる、だけどこの子を連れて行くのは考えるまでもなく足手まといで。
何も言えずにいると、アリババさんが私が今正に考えていた事をそのまま伝える。
だけど、それでも「着いていく」と言い張る姿に、また沈黙が訪れる。
そんな何とも言い難い空気を破ったのは白龍さんだった。
「なら、君のしたいことを俺が代わりにしよう。必ず両親を見つけて帰る
それが出来なければ、迷宮に巣くう全ての敵を俺が倒そう……それでどうだ?」
女の子に視線を合わせ、そう断言する姿は真剣でこの場を凌ぐための嘘ではないと一瞬で分かった。
だからこそ、女の子も納得してくれたんだと思う。
その場は収まったんだけど、私は迷宮に向かうまでの間、別のことでモヤモヤしていた。
家族、か……私が居なくなって日が経つけどきっと。
誰も心配なんかしてくれてないんだろうな、この世界に来て忘れがちになってしまうけど、私は元々は違う世界の人間で、何時消えても可笑しくない存在なんだ。
帰りたくない、な……。
そんな思いばかりが胸を抉って、伸びてくる光に私は全く気づかなかった。
「瑠花殿!」
真下で白龍さんが叫んでるのが一瞬見えた。
私、また迷惑を? そう思った次には同じようにアラジン君達も捕まっていて。
空中を飛ぶようにして、目前に迫った迷宮へと私達は吸い込まれた。