第3章 煌帝国
白龍さんと一頻り笑いあった後、食事の席で白瑛さんが私に何か言おうとしていた事を思い出す。
「白瑛さんにも謝らないと……」
きっと心配して下さっているだろうと思いそう呟く。
「そうですね、でも今は難しいと思います」
「え、どうしてですか?」
疑問をそのまま口に出すと、
「今夜はシンドリアから客人が来てますので」
と、それだけ言って白龍さんは笑った。
だから私も深くは聞かずに、部屋へ戻ろうと言おうとしたんだけど。
「それに、俺達は客人が帰る明日、別の船でシンドリアに発ちますから」
「俺達って……え?」
突然の事に頭がついていかない。
俺達って言うのは白龍さんと白瑛さんの事だよね?
それとも、まさか……
「ああ、姉上はついて来ませんよ。シンドリアに向かうのは俺と……瑠花殿ですよ」
「!!」
考えていた事をそのまま口に出されて、驚きがそのまま顔に出る。
取り残されないのは嬉しいし、ついていけるならそれが一番だと思う。
だけど、頼ってばかりで何の役にも立たない私がついていってもいいのかと、どうしても思ってしまうのだ。
「俺と二人では……嫌ですか?」
嫌なはず絶対にないのに。不安そうに聞いてくるから何だか気恥ずかしくなって。
「私は、貴方の従者ですから……邪魔でないならついてきます」
と、可愛げのない事を言ってしまった。
だけど、それすらも白龍さんは笑い飛ばしてくれて、
「邪魔なんかじゃないですよ、自慢の従者ですから!」
と誇らしげに断言してくれたのだった。
だから、知らなかったのだ。
私達がこんな風にやり取りをしている間に紅玉が策に嵌められているなんて……
この世界が私の知らない『魔法』に溢れた世界だって。
シンドリアについてすぐ、そんな忘れていた事実を思い知る事になる。