第3章 煌帝国
「逃げて来ちゃった……」
泣き顔を見られたことが恥ずかしくて、飛び出すように逃げてきたけど。
ここ、何処だろう……そんなに遠くまで来てないはずだけど、人気がないし、何より静だ。
「二人共、怒ってるかな……」
それとも心配してくれたり、するのかな。
なんて、逃げ出してきておいて都合がいいか。
「はぁ」
すっかりと暗くなり星が瞬く空を見上げて溜息をつく。
その時だった。
「ちょっと、貴女! 私の部屋の前で溜息なんてやめてくれるかしら!!」
凄い勢いで怒声が飛び込んでくる。
ついで、紅く美しい髪が瞳に映ってーー
「綺麗」
怒られたというのに、そんな言葉が口から出る。
「き、綺麗!? 有難う、ってそうではなくて!!」
コロコロと表情を変える女性は、とても愛らしくて見ているだけで心が癒やされるようだった。
「ご、ごめんなさい」
「悪いと分かればいいのよ、それで貴女はこんな場所で何をしていたのかしら?」
平静を装うようにしてそう言う女性の頬は心なしか赤い。
やはり見知らぬ者が侵入してしまったから怒っているんだろうと思った。
「それは、その……」
言い淀んでいると、距離を詰められニッコリと笑顔で脅迫された。
「いいから早く言いなさい」と。言い知れぬ迫力に負けて、今日の出来事をザッと話すのであった。