【ハイキュー】 poco a poco (ポコ ア ポコ)
第10章 うごきだす
その日から、立花は少しずつ学校に行く日が増えていった。
行きはこれまで通り菅原と登校し、
帰りはバレー部のメンバーと合流して帰った。
「いいのかな。毎日。私ほんとに部外者……。」
「何言ってんだ、無事に日向と影山が追試をパスできたのは立花のおかげなんだから、むしろ恩人だろ。」
澤村はいつまでも遠慮しがちな立花に
「気にすんな」と、もう何回目かわからない台詞を言った。
「でもこうちゃんもみんなと帰った方が楽しそうだし、
私に付きあわせてばっかりっていうのも心苦しいから、この方がいいのかな。」
「菅原は、そんなこと少しも考えてないと思うけど。」
今度は清水が口をはさむ。
「いやぁ、でもあんな楽しそうな姿を見ちゃうとね……。」
立花はそう言って、
後輩たちとふざけながら歩いている菅原に視線を向ける。
「あのね、清水さん。私清水さんに言わなきゃいけないことがあるの。」
「なに?」
立花は意を決したように清水の顔を見る。
一緒にいた澤村も不思議そうな表情を向ける。
「私ね、ちゃんと覚悟はできてるから。覚悟っていうか自覚っていうか心の準備みたいなもの。」
「なに。何の話?」
清水は何のことかさっぱりわからない様子だ。
「私は、こうちゃんの幼馴染だけど、本当にただそれだけだから。
特別な存在だなんて自惚れてもいないし思い上がってもいない。
こうちゃんが女の子に人気があることは知ってるし、普通に彼女とか恋人とかできても不思議じゃないってことも分かってる。
そりゃ、少しも寂しいとか悲しいとか、ないわけじゃないけど、でも、そんなこと言える立場じゃないっていうのは重々承知の上なので、
いつでも受け入れる覚悟はできてるっていうか……。
つまり、清水さんはすごくすごく素敵な人なので、
私は何も不満はありません。心配もしていません!」
一息に言い切った立花に、
清水と澤村は呆然とするしかなかった。
「じゃあ、えーと、私、ちょっと日向君と影山君に追試合格おめでとう言ってこなくちゃいけないので!」
そう言って逃げるように二人の前から走り出した。