【ハイキュー】 poco a poco (ポコ ア ポコ)
第7章 傷は、少しずつ深く
食事のあと、立花に貸すノートを部屋に取りに行くとき、珍しく彼女はついてきた。
「こうちゃんの部屋ひさしぶり。あ、パソコン新しくなってる!」
不自然なまでに元気な立花に、菅原は真剣な面持ちで向き直る。
「みー、あのさ、今朝のことなんだけど……。」
「待って。」
菅原の言葉をさえぎって立花が口を開く。
「ごめん。今朝はびっくりさせちゃったよね。
でも気にしないで。最近よくあるんだ。
夜中に具合悪くなったりするの。
病院も行ったけど異常ないって。だから大丈夫。
こうちゃんのせいじゃない。こうちゃんは何も悪くない。だから……。」
一呼吸おいて、立花は菅原の目を見てはっきりと言った。
「だから、これからも朝ごはん食べに来て!」
「……は?」
予想外の言葉に、菅原はぽかんとする。
「これからもうちにごはん食べに来て、一緒に学校に行くぞって言ってほしい。
今朝の吐き散らかした私の姿見てドン引きしてもう無理っていうなら、話は別だけど。」
「いや、そんなのは全然気にしてないけど。俺はお前がおもらししたとこだって見てるわけだし。」
「それ子供の時の話だよね。うん。まぁ、じゃあ、これからも今まで通りよろしくお願いします。
いまはあんまり行けてないけど。また普通に通いたいと思ってるから。
だからこうちゃんが一緒だと心強いの。」
それを聞いて菅原は深い深い安堵のため息をついた。
「はーー、マジか。良かった。
俺てっきりみーはもう学校なんて行きたくなくて、それなのに俺が無理矢理引っ張り出そうとしてるのかと思って反省してたんだよな。
でもそっか。みーがそう言うなら、俺も自信持ってこれからも迎えに行ける。」
それから1年以上、菅原は毎日立花の家に通った。
相変わらず学校に行けない日のほうが多かったが、焦りもなくなり、両親も理解を示していた。
テストだけは進学のためにうけなければならなかったため、
開始ギリギリに菅原と教室に入り、終了と同時に菅原が連れ帰ってくれた。
通常授業もなんとか出席日数に足りるように出て、無事に三年生になることができた。
そして、今。
日向と影山と出会って、立花も少しずつ心境の変化を感じていた。