【ハイキュー】 poco a poco (ポコ ア ポコ)
第6章 思い出したくないあれこれ
事の発端は、立花本人にもよくわからなかった。
入学式、新入生代表として壇上に立ち脚光を浴びたのは間違いない。
文句なしの主席合格だった。
外見も色白で華奢で優等生らしい出で立ち、特別美人ではないが今時のかわいらしい女子高生としては十分なルックスだった。
それにもかかわらず、明るくハツラツとした笑顔と、おっとりとした振る舞いがいいギャップとなっていた。
「立花さんって、なんか良いよね。」
そんな声を聴くたび、菅原は幼馴染として大変誇らしかった。
元々身体は強くなく、環境の変化によるストレスのせいか5月に体調を崩して入院した。
数週間後に学校に戻ったときには、すでにクラスのグループは形成されていて、立花の居場所はなくなっていた。
入学式での華々しいデビューも、遥か昔のこととなっていた。
それでも明るく振舞っていれば、持ち前の愛されキャラでなんとかやっていけると思っていた。
実際、中学まではそれでたいていのことは乗り越えられたのだ。
「立花さん、さっきの英語のノート貸してくれない?先生黒板消すのはやくて、追いつかなかったんだ。」
そういって声をかけられれば、快く貸した。
「うん。いいよいいよ。私のでよければ。」
それをきっかけに仲良くなれた。
「ありがとう。立花さんのノートすごい見やすいね!助かっちゃった。ねえ、お昼一緒に食べない?あっちでいつも一緒に食べてるメンバーがいるからさ。」
もちろん喜んでついて行った。少し派手な子たちだった。
部活は特に入っていないようだったが、音楽を聴いたり雑誌の話をしたりするのが共通の話題のようだった。
音楽もファッションも、流行のものも全部その子達が教えてくれた。
みんなでわいわいするのは楽しかった。
それでもなんとなく壁は感じていた。
遠足の班を作るときには定員に一人多いからと自分だけが外れた。
休日に自分以外のメンバーで遊びに行っていた。
休み時間、気を抜くとみんなでどこかへ行ってしまい自分だけ取り残された。