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PARTNER [D.Gray-man] 長編

第1章 はじまり


そして、アリシアは夢での出来事を思い起こす。家族に会いたいにしてももっとましな夢を見るような気がする。それに夢の中での父であろう化け物が最後につぶやく言葉が、アリシアには気になっていた。あのシーンは毎回必ず繰り返される。だが、肝心の言葉はわからない。
すごく大事なことであるような気がするのに、ノイズがかかったかのように声はかき消される。
皮の削がれて表面化した筋が表情を歪めて口を動かす。そんなことは思い出せるのに吐き出された言葉が何だったのかがなんだったのか。それを思い出そうと深く深く思考を潜ろうとする。

すると突如激痛がアリシアを襲った。

「あっ……ぐ……」

思わず頭を手が覆う。頭を叩かれるなんて生易しいものではない。ぎゅるぎゅると血が膨れ上がり、頭が弾けてて裂かれるように痛むのだ。

そして様々な映像が頭の中を駆け巡る。断片化されてランダムに写真のように頭の中で浮かんでは消える。今まで生きてきた分の記憶が一気に流れ込んできていた。その情報の多さに頭がおかしくなってしまいそうに思う。必死に痛みを和らげようとシーツを握り締める。だが、あまり意味はなく、時間が過ぎないとこれが終わってくれないことをアリシアは知っている。

苦しい映像ばかりではない。教団のみんなと笑いあう姿や記憶の中で父と母のとの記憶も流れていく。夢の中で鮮明に家族の顔を思い出せるのはきっとこのおかげだろう。切れそうになる意識を保っているのも同様だ。アリシアは苦笑する。怪我の功名のようなものか、なんて思ってしまう。そしてもう十年近く会っていない家族想いをはせる。映像が母や父が笑っている場面に切り替わる。今なら彼らに届きそうな気がして手を伸ばした。

「私は頑張っていますよ、パパ、ママ」

伸ばした手は当然のように空を切る。アリシアの目尻から涙がこぼれた。
やがて濁流のような映像が終わり、アリシアはゆっくりと息をついた。
夢のあの言葉を思い出そうとするたびにこれは繰り返される。だから最近は夢を見ても深く考えないようにしていた。夢は夢で現実には影響しない。それに任務に支障をきたすことがあれば問題だ。というより、倒れたりしようものなら死活問題になってしまう。まさに文字通りに。
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