第1章 はじまり
今回は少し油断していた。ふと思考が沈み込んでしまうと痛みが襲ってくるのはわかっていたのに。考えない、考えない、考えない。アリシアは胸に言葉を刻み付けていた。
すると思考を切り裂くように電子音が部屋に響き渡る。通信だ。
アリシアは一気に表情が曇り、けだるそうにシーツから這い出して通信機を手まねきする。すると通信機であるゴーレムは嬉しそうに近寄ってきて手の中に滑り込んできた。
すると今度はけたたましい声が部屋を満たす。
「アリシアー。おっはよーん! お目覚めはどうかなー? もしかして起こしちゃったー??」
ふざけた調子の声にアリシアは一気に力が抜ける。言葉に色々と矛盾が生じているがそれはもう彼の個性としか言いようがない。アリシアはため息を吐いた。
「……おはようございます、コムイ」
どうかくだらない要件ではないように祈るばかりだ。