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PARTNER [D.Gray-man] 長編

第1章 はじまり


夢を見ている、とアリシアは思った。
なぜそれがわかったのかというと現実とかけ離れすぎているからだ。

気が付くとアリシアは実家のリビングでテーブルに座っていた。台所には母が食材を包丁で刻む音。コーヒー好きだった父はその傍らでミルを引きながら鼻歌を歌っている。
リビングには美味しそうな香りが漂う。そしてアリシアはいまかいまかと食事を待ちながら幸せを噛みしめていた。脳の作りだした幻想だとわかっていても、自然と自分の顔がゆるんでいるのがわかる。

ふと思いついてアリシアは母に私も作るの手伝おうかなんて言ってみた。すると母は肩を揺らして、いいのよと
笑っていた。父は母子の会話を聞いて、パパはママのおいしい料理が食べたいなだなんて言いながら母の肩を抱き寄せる。アリシアは失礼な父親だとむくれながら内心は楽しくて仕方がなかった。

なんて幸せな夢だろうとアリシアは思う。
どこかの家庭で当たり前のように繰り広げられる、軽口やケンカがこんなにも愛おしい。
アリシアは胸が苦しくなって締め付けられるような痛みでうつむく。するとその様子に気が付いた両親が心配そうにこちらへやってきた。痛みで顔を上げることが出来ないアリシアに両親は肩や頭を撫でてくれる。優しいぬくもりに涙腺がゆるんでしまう。

このまま夢の中にいられればいいのになんて願ってしまう。

「大丈夫かい?」
アリシアは顔を上げて笑顔で大丈夫だと言おうとした。

その瞬間、アリシアは悲鳴を上げた。
父であったものは皮膚が剥げていて何か人が構成されているものとは違うものがむき出しになっていた。額には銃創があり、体はケーブルや鉄などの機械でできているように見えた。慌てて父であったものの手を振り払い、離れて周りを見る。そこは確かに家だった。だが、薄暗く、壁は血にぬれ、ありとあらゆるものが破壊されていた。母はどこに行ったのかと見渡すが、どこにもいなかった。

「どうしたいんだい? アリシア?」
父であったものがアリシアに手を伸ばす。

「来ないでっ!」
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