第2章 貴女に愛が届くまで
「お前のやり方は気に食わねぇ」
一刀両断されたアリシアは口の端が震えたが、さらにたたみかけようと口を開いた。だが、それを親方に手で制された。
「契約の書面を三日以内に用意しろ。お前等はここに商売しに来た。そして俺はそれ以外は何も聞かなかったことにする――作業してる間にそうわごとを言うかもしれねーがそれはただのうわごとだ」
アリシアは満面の笑顔になる。そして目を輝かしてシンギングバードを指さした。
「あ、あの! じゃあ、早速これ経費で落としていいですか!? 欲しいです!!」
あっけにとられたように親方が口を開けた。そして大笑いする。工房中に響く声だった。そしてしばらく笑った後、涙が出たのか目尻をぬぐった。アリシアを見て口の端をあげた。
「あんたはそっちの方が可愛らしいな」
「え、そうですか、えへへ」
嬉しそうに頬をかくアリシアを神田は無表情で見つめていた。