第2章 貴女に愛が届くまで
アリシアは考えに考え抜いた結果、あるドアの前に立っていた。
中からは様々な音がしている。周りにくらべてこじんまりとしているが、れっきとし工房だ。絶え間なく聞こえてくる音が入るのを躊躇させるが、待っていてもなにも始まらない。アリシアは息をのみ込んでドアノブに触れた。
するとひねってもいないのにドアは勢いよく開けられた。
「うぐっ!」
アリシアはよけることが出来ずに木製のドアを顔面で受ける。ふらりとよろけてアリシアは顔を抑えた。
「んー?」
ドアの向こうから声が聞こえてきて、青年が顔をのぞかせた。そして人のよさそうな顔で笑った。
「おぉ、ごめんごめん」
青年がするりと出てきて、ドアは後ろ手でゆっくりと閉じられた。
「何か用かな? お嬢ちゃん」
アリシアの頭を撫でてくる。にこやかに尋ねてくる青年の手を振り払いアリシアは団服のローズクロスを見せた。
「すみません、私は黒の教団所属エクソシスト、アリシア・ボールドウィンです。こちらの責任者はいらっしゃいますか」
青年は不思議そうに首をかしげた。
「……最近はそういう遊びでも流行ってるのかね」
どうやら身長のせいでまともに取り合ってくれていないようだ。任務先ではよくあることだが、癇に障る。アリシアはみけんにしわを寄せた。
「私は正式な使者です! 責任者に会わせてください!」
青年は納得がいかなそうにあごをなでる。
「なら、先入ってる奴の連れか? ずいぶん若いな二人とも」
青年の言葉にアリシアは目を見開く。思わず声が震える。
「あの、そ、それって黒髪長髪ののいけ好かない顔面の男ですか!?」
「あーそうそう。女かと思ってしゃべりかけたら殴られかけたわ。まー入んな」
笑って青年はドアを開けてくれたので、短く礼をして入り込む。
そして息をのみ込んだ。