第2章 貴女に愛が届くまで
それも調査が上手くいってないせいもあるかもしれない。
――あれから二日が経ってしまっている。
初日に見た馬車と男たちは重要な手がかりだ。しかし、彼らを追うのは容易ではなかった。
特に重要だと思われるシルクハットをかぶった青年を追いかけようとしたが、ある程度進むとかすみのように消えてしまうのだ。おかげでオルゴール音しか指針がなくなってしまっている。
そしてアリシアの推測通り音は移動をしていた。なので余計に探しにくい。しかも、もしイノセンス自体が音しか存在しないとしたらどうやって教団に持って帰ればいいのだろうか。それとも、別の場所に置かれていてそれが幻影を見せているのか。アリシアは後者だと思っている。
音は工房側から住居側に進んでいる。後は特定するだけなのだが、オルゴールの音が反響してどこから鳴っているのか住宅だとさらにわからなくなる。このやり方では完全に手詰まりだった。
憂鬱でフォークを持っていた手が止まる。一人で座る席はないので向かいには椅子が置いてあった。
だが、視線の先には誰もいない。神田は二日目から姿を消した。神田はアリシアと行動を共にすることを徹底的に避けるつもりらしい。完全にアリシアをお荷物だと判断したようだ。部屋も店主を脅し個室にしていて、訪ねてもまるでいたためしがない。
コムイにもそのことは伝えてあるが、ひょうひょうとかわされる。彼は考えを改めるつもりがないらしい。
アリシアはフォークを握りしめた。
「なにがパートナーだっていうんですか」
もうこの関係は崩壊してしまっている。そもそも関係を気付こうとしない人間に手を差し伸べているのは苦労するのだ。アリシアも神田と行動することを諦め、一人で探すことに決めた。
余裕がないのに無駄なことには時間を割けない。
これがもっと仲のいい人間と組めばもっと効率がいい探し方が出来るはずだ。相談や、推測など一人でやるのは難しい。