第2章 貴女に愛が届くまで
「ま、とりあえずこの任務は二人でこなさないといけないんだし、ちょっと考え直してみてよ」
コムイがアリシアの意見をうなずくことはなさそうだ。そのことに落胆しつつ、アリシアは言葉を吐き捨てた。
「――リナリーがお兄ちゃんが最近引っ付いてきて気持ち悪いって言ってましたよ」
「えっ!? どういうこと!? アリシアくわしっ――」
コムイが言い終わる前にアリシアは電話を切った。そして自分の幼さにため息をつく。後でリナリーに謝らなければ。でも、今は誰かにうっぷんを吐き出したい気持ちだった。
アールは今どうしているだろう。もしかしたら本部にいるかもしれないとまた本部の回線に電話をかける。何度かコール音がした後、電話がつながった。
「誰だっ! このくそ忙しいときに!」
この声はリーバーだ。ほっと安心しして息をつく。
「アリシアです」
「おまっ、また室長で遊んだだろ! 今あいつなだめんので大変なんだぞ」
やはり彼にしわ寄せが行ったようだ。電話口からコムイの叫び声が聞こえてくる。リーバーはかなりお怒りのようだ。暴れるコムイが簡単に想像が出来てさすがに申し訳なくなった。
「すみませんでした、ちょっと八つ当たりでした。ごめんなさいって伝えてください」
リーバーはなんでそうなったのかすぐにわかったらしい。
「神田のことか」
「……はい」
リーバーが頭をかく音が聞こえた。彼の癖で困っている時に出るものだ。そしてため息が聞こえた。
「正直、俺にもわからん」
「ですよね、私もですよ」
本当に意味が分からない組み合わせなのだ。本来なら同じ師匠に師事を仰ぐデイシャやマリあたりが組まされるのが妥当だとアリシアは思う。リーバーは少し考えるように間をおいて言う。
「――でもな、お前なら神田とうまくやれそうとも思った」
「……なんでですか?」
んー、と言いつつリーバーは言葉を選ぶように慎重に話し出した。
「あいつってお前とケンカしてるとさ、すごくいきいきしてるように見えんだよ。普段は冷めてんのにさ」
リーバーの言うことに納得が出来ずアリシアは疑問を口にした。
「そうですか? みんなと一緒な気がしますけど」
いぶかしげなアリシアの声にリーバーは軽く笑った。
「まぁ、俺の見解だから」
「そうですか」