第1章 はじまり
「驚くなよ、めんどくせぇのはこれで終わりだ」
耳元に誰かがささやいてきた。きっとあの赤毛の男だろう。
アリシアは首を傾げた。何に驚くというのだろう?
すると足元からうっすらと光る木のつるのようなものがはい出してきた。アリシアは小さく悲鳴を上げて後ずさろうとすると、赤毛の男がそれを止める。
「だから、驚くな。すぐ終わる」
木のつるはアリシアに静かにまとわりついていく。四肢を抑えられ腰に巻きつくとゆっくり地面から体が浮上していった。そしてアリシアは息を止める。
目の前には異形の姿をした何かがいた。
辛うじて顔に似た部分はあれど、それ以外はまるで人の形をしていたない。
恐怖で震えあがる。すると化け物はアリシアが握リしめていた銃を簡単に取り上げた。
アリシアは必死に取り返そうと暴れる
。
「私の銃、返して! ばけもの!!」
「だ、大丈夫……ちゃんと……か、返す」
アリシアは言い返そうとしたが、徘回る触手が体の中もまさぐるように浸食してきて気持ち悪さでなにも言えなかった。
そして化け物はアリシアの銃に口づけをした。その行為がアリシアは死ぬほど嫌だったが、抗議もできず気持ち悪さに耐えていた。
「1……15……37……な、なんてことだ」
化け物はアリシアの銃から口を離し、驚いたような声をあげる。
「どうした、へブラスカ」
「か、彼女のシンクロ率は……40%だ」
周りが動揺したようにざわつく。アリシアは意味が分からず周りを見ていると、一緒に乗ってきていた赤い団服の男が近づいてきた。
「説明しろ! へブラスカ!」
どうやらこの化け物がへブラスカというらしい。アリシアとへブラスカを鋭い眼光でにらみつけてくる男にアリシアは少し萎縮した。
「か、彼女の……シンクロ率は、き極めて……低い値にある」
その言葉を聞いた瞬間、男はさらに声を張り上げる。
「発現出来ないというのか!?」
「いや……か、可能ではあるが……AKUMAを倒せるほどの……力はない」
周りから落胆するような声が上がる中、一人だけ違う表情をしているものがいた。赤い団服の男だ。
彼はにっこりとした笑顔をアリシアに向けた。笑顔だというのにそれはアリシアを総毛出させた。