第1章 はじまり
そうしてアリシアは見送られてここに来た。
アリシアは胸に誓ってここまで来てたのだ。
心に誓いを刻み込んだ瞬間、めまいに教われて体がふらついた。
その直後、頭の中で様々な映像が流れだした。血、悲鳴、何かが裂かれる音。何かの温かさ、涙。激痛が体を襲い、アリシアは意味が分からず力なく崩れ落ちる。
アリシアの記憶していた思い出が焼けるように焦がされていき、別の映像に変わる。家の中だった。木が焦げ付くような匂いと硝煙の匂いが混じっている。パパにもらった銃を握り締めて何かを叫んでいる自分。泣きながら誰かに銃口を向けている。……誰に?
誰に?誰に?誰に?誰に?
そこでさらに痛みが増した。様々な映像はどれも痛みを含んでいて映像の濁流がアリシアに襲い掛かってくる。気が付けばアリシアはのたうち回って悲鳴を上げていた。
そのことに気が付いたのはすらりとした長身の男が頭をなでていたからだった
「大丈夫か?」
アリシアは平静を取り戻し、頷いた。そして男を見る。
黒いコートにシルクハット、顔の半分を隠したマスク。無造作で整えられていない赤い髪の毛。 なぜかアリシアは彼を見た瞬間、ひどく安心した。男はアリシアを立たせて、苦い顔をして見上げる。
「さぁ、大元帥サマのお出ましだ」
暗闇に目が慣れてきたころ、頭上から閃光のようなまぶしさが降ってきた。アリシアは強く目を閉じる。
そして、遥か頭上から光が差して複数人がアリシアを見下ろしていた。
《神のイノセンス》
遥か上からつぶやかれるその言葉はまるで神のように厳粛で神聖だった。
《全知全能の力なり》
《また一つ我らは神を手に入れた》
彼らが言い終わる。彼らがへブラスカという人物だったのか思い、疑問が浮かぶ。赤毛の男は大元帥サマだと言っていた。じゃあ、へブラスカという人物はどこにいるのか、これから別の場所で会うのだろうか。アリシアはすぐ機械で浮上するのかと思ったが、そうでもないらしい。