第2章 貴女に愛が届くまで
神田が身じろぎして、リアから逃れようとするがそれは叶わない。
「……! おい!」
神田の抗議の声もむなしく、マルコは本当に嬉しそうに笑顔になった。
「よかったー。では、よろしくおねがいしますね」
彼は改めてアリシアに手を差し出した。だが、アリシアはその手を取らず、紙袋をその手に持たせた。
「ですが、こちらからも条件を付けさせていただきます」
紙袋を見て少し残念そうにしたが、マルコはすぐにニコニコとして首肯した。
「構いません。どういったことでしょう?」
アリシアは柔和に微笑みながら三つ条件がありますと指を一つ指を立てた。
「一つ、明日からイノセンスを探させていただきます」
アリシアは二つ目の指を挙げる。
「二つ、イノセンスは祭りの後、即座に回収させていただきます」
そして、と言って三本目の指を持ち上げる。不敵な笑みを浮かべて。
「三つ、我々は神以外には屈せず、いかなる敵も排除します。――もちろんそれが人間であってもです」
ほんの少しだけだがマルコの笑みが崩れた。だが、それも一瞬だった。
少しの間があってマルコはリアに向けて手を振った。リアは神田から離れ、部屋のドアを開けてそばで待っている。
つまり、話し合いはこれまでということだろう。アリシアは神田に歩み寄る。そして小声でささやいた。
「ちょーかっこ悪いですよ。神田」
「てっめぇ!!」
即座に立ち上がる神田に噴き出しながら背中を叩く。
「無事ですね! じゃあ、さっさと行きますよ」
神田は凶悪な表情で舌打ちして大股に歩いて部屋から出ていく。それについてアリシアもドアをくぐろうとして立ち止まる。
アリシアは振り返ってマルコを見ながら微笑んだ。
「あなたがたに神のご加護がありますように」