第2章 貴女に愛が届くまで
つまり体のいい護衛ということだ。金もかからず、かつ市民からの不満が出ない。自分たちのことをコマのように使うと宣言しているようなものだ。アリシアは呆れて息を吐いた。
すると隣からひやりとした空気を感じてアリシアは止めようとしたが、時すでに遅く。
「……勘違いするなよ?」
眼光を鋭くした神田は激しくマルコをにらみつけていた。
「俺たちは慈善事業でここにきてんじゃねーんだよ。イノセンスの場所も把握していない、探すな、人を助けろ? おい、テメェ何様だ?」
席を立ちあがった神田にリアが歩み寄る。
「どけよ」
リアをはねのけようとした神田の手を捻り地面に叩きつけ簡単に組み敷いた。神田も起き上ろうとするが、まったく歯が立たない。
「神田!」
慌てて立ち上がり、アリシアはイノセンスである銃をつがえる。
「落ち着いて落ち着いて」
こんな状況だというのにマルコの表情は穏やかだ。むしろ無邪気に笑っているようにも見える。それが逆にぞくりとさせた。
「もちろんタダでとは言いませんよ」
マルコが指を鳴らすと部屋のドアが開き、メイドがトレイを持って入ってきた。そしてトレイの上に置かれていた分厚い紙袋をアリシアの前に置く。中身は容易に想像がつく。
アリシアは不快な表情を隠さなかった。だが、すぐに顔をほぐして紙袋を手に取った。
「……わかりました」