第2章 貴女に愛が届くまで
「おぉ……」
アリシアは思わず感嘆の声をあげた。
白を基調とした洗練した場所に見える。どこかの豪商かと思わせるような役所だ。大きな門構えから見るにそれなりに儲かっているようだ。これもきっと血税で賄われているはずなのに大丈夫なのだろうか、なんて的外れな心配をしてしまう。派手な印象はないが、きれいに木々が整えられた庭園を横切ると屋敷が見えてきた。
するとドアの前でたたずんでいる男を見つけた。
金色の髪をオールバックにして、チョッキとシャツを着こなしている。年は40代くらいだろうか。だが、もっと若いのかもしれない。そういう精気が目で見えるようだった。
男は笑顔でこちらへ手を振った。
彼の近くまで来るとまた笑みが増す。そして彼はアリシアに手を差し出した。
「ようこそお越しくださいました。わたくし、市長のマルコと申します」
アリシアは手を握り返した。
「ご丁寧にどうも、私たちは黒の教団エクソシスト、アリシア・ボールドウィン。彼は神田ユウです」
神田を見てマルコは目を輝かす。
「もしかしてジャパニーズですか!?」
勢いにけおされながらもすげなく答えた。
「オレは生まれは日本じゃない」
マルコはガッカリしたように体を離す。
「そうですか。昔、本で黄金の国だと聞いていましたので興味がありましてね」
何だか想像していた人間像と違ってアリシアは困惑する。わざわざ屋敷の外まで自ら出迎え話をするなんて、なかなかお目にかかれない光景だ。もっと強欲で計算高い人物だと思っていた。だが、この市長は朗らかでどこか憎めない。それにリアが疑心暗鬼になっていると言ったがそんな様子もない。
リアが市長に近づき耳打ちする。
「市長、お話は中で」
リアの言葉にマルコはうなづいた。
「そうですね、リアの言うとおりだ。さぁ、中へどうぞ! おいしい紅茶とケーキを用意してありますから」
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