第2章 貴女に愛が届くまで
「どなたですか?」
ドアの向こうから澄んだ女性の声が聞こえてきた。
「わたくし、ここの市長の秘書をしておりますリアと申します。開けていただきますでしょうか?」
アリシアはドアを開けてにこやかに招き入れた。
「これは、市長様の秘書さんでしたか。わざわざご足労ありがとうございます」
リアはきれいな金髪をきれいにまとめ上げている美人だった。目元が鋭く、きつい印象を与える顔をしている。
「入れていただきありがとうございます」
丁寧なお辞儀にアリシアも同じように礼をする。
「いえいえ、どういったご用件でしょう?」
「はい、要件なのですが市長様が直々にお会いしたいと仰せです」
「それは、調査の件ですね? 我々はあまり歓迎されているとはいいがたそうです」
宿屋の件といい、今回秘書が現れたのもなにかしら胡散臭さを感じる。
苦笑いをするアリシアにリアは申し訳なさそうに表情を変えた。
「市長は今疑心暗鬼になっておられるのです」
「どういうことでしょう?」
リアは周りを見て首を振る。
「申し訳ありませんが、こちらでは……」
「……わかりました」
アリシアは神田を見て手招きをする。ベットに座り込んで無視を決め込んでいた神田も重い腰を上げた。
「こちらです」