第2章 貴女に愛が届くまで
宿の手配も終わり、二人は宿近くのバーで時間をつぶすことにした。
だが、二人は同じ席には座っていない。それぞれのテーブルに食事が運び込まれてどちらも食べ終わっている。
神田はつまらそうにバーのステージで歌っている歌手を眺めているし、アリシアはバーの店主に金を渡して電話を使わせてもらっている。アリシアの電話の相手はもちろん教団本部コムイ室長だ。アリシアはあらん限りの言葉でパートナーである神田を罵倒している。だが、バーの隅に電話があるため神田には聞こえていない。
「ちょっと! 聞いてますかコムイ!?」
電話の先のコムイはものすごく間延びした声で答えている。
「きーてる、きーてるよ、アリシアちゃん」
いぶかしんだアリシアは試すように問うてみた。
「じゃあ、さっきまで言ってたことをかみ砕いて話してくださいよ」
「えー、ふんふん、まぁ、あれでしょ? ケンカしたんでしょ?」
「まったく聞いてないじゃないですか!? なんでコムイはそんなんで室長やれてるんですか、私、信じられません!」
受話器から笑い声が聞こえる。笑い事じゃないと思うのだが、彼にはそんなことは通じない。
「わぁーお、きっついなー。じゃあちゃんと聞くから、理路整然と話してみて、これ一応業務連絡だから」
ふぅ、と短く息を吐いてアリシアは語り始める。
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