第2章 貴女に愛が届くまで
アリシアは資料から街の地図を取り出して指をさす。
「街は主に住居が南側に面しています。中間が繁華街、オルゴールを売られているところもここですね。そして北側がオルゴールの工房が多くあるようです。――私たちが今回張り込むのはここですね」
アリシアは工房側の通りを指した。それに神田は子馬鹿にしたように笑う。
「安直だな」
アリシアは苦笑する。
「仕方ないんです。なにしろ情報が少ないので、可能性の低いところから探すのが一番なんですよ」
神田がピクリとまゆを上げた。
「可能性が低いってどういうことだ」
汽笛が聞こえてきて社内にアナウンスが流れる。目的の街にもうすぐ着くようだ。
アリシアは資料を鞄にしまい始める。
「おい!」
神田のとがめる声も無視してアリシアは早々に荷物をまとめ終える。小さなバックを肩に下げて、笑顔で一等室のドアに手をかけた。
「さぁ、手始めに宿でも探しましょう?」
神田を待つことなくアリシアは進んでいく。
部屋に残された神田は口惜しげに舌打ちして、荷物を担ぎ上げ部屋を出た。
誰もいなくなった部屋にはガタン、ゴトンと鉄道が動く音しか聞こえくなった。