第2章 貴女に愛が届くまで
ガタン、ゴトンと音を立てながら鉄道が揺れる。
揺れが一定なので眠気が襲ってきそうだが、今はまるでそんな気がしない。原因はわかっている。目の前で眉間にしわを寄せながら座っている男のせいだ。
絹のように流れる黒髪を一つにまとめ彼は教団を出る前にもらった資料を見ていた。
ちなみに教団を出てから今まで会話は一切ない。
息が詰まりそうな空間だとアリシアは何度目かのため息をついた。
だが、自分から話しかける勇気はない。口を開けば罵倒しかしてこなかったので、関わり方がわからないのだ。
――なんでこんな奴とコムイは組ませたんでしょう?
本当に謎ばかりだ。
前までずっと一緒に任務に出ていたアールではなぜだめなのか。連携もうまく取れていたつもりだし、任務だってちゃんとこなしていた。それに教団内では一番仲が良い。
教団に入ってからアールとは兄妹のように育ってきたので、アリシアは彼のことを本当に兄のように思っているのだ。だが、そのことをコムイは甘えだと言った。
――変わりなさいってことなんですかね
もっとエクソシストとして成長しなさいということなのだろうか。確かにアリシアは弱い。射撃の腕は良いが、いかんせん武器の性能が低すぎるのだ。だから、探索部隊に陰口で使えないと言われる。
武器を加工したのは師匠であるクロス元帥だ。彼は元化学者でもあるから加工する腕に問題はないはずだ。まぁ、あの師匠だから本当にちゃんと作ったのかは定かではないが。
だが、それ以前に能力が、適合率が低すぎるのだ。コムイたちと数えきれないくらいシンクロ率を上げる実験をしたがまるで変わらない。理由がなんなのかもわからない。
しかも、面倒なのが弾の問題だ。希少銀を混ぜ込んで作った弾丸でないと威力が出ないのだ。あまり手に入るものではないのでそれだけ弾の数が少ない。今回も持ってきている段数は200程度だ。
不安。不安しか今はない。だが、それを振り払える要素もない。だが、行くしかないのだ。
アリシアは神の使徒だから。