第1章 はじまり
納得したように思案し始めたアリシアにとは反対に神田は嘲笑した。
「つまりおもりしろってことかよ、ごめんだな」
立ち上がろうとする神田をまだ終わってないよとコムイは言い、手で制する。
「神田くんには新人くんはつけないよ」
「どういうことだよ?」
意図を測りかねた神田がコムイをにらむ。その眼光をものともせずにコムイはにこやかに言い放った。
「キミにはアリシアちゃんと組んでもらうから」
一瞬の間。そして沈黙。コムイの言葉が頭に届いた瞬間、二人は立ち上がる。
「ハァっ!?」
おもしろそうにコムイは笑い二人をながめる。
「ほら息ぴったり」
僕の人選は間違ってなかったってことだね、なんて嬉しそうに言っている。
「じょ、冗談じゃありませんよこんな奴と!」
神田を指さしながらアリシアは神田をにらみつける。
「こっちから願い下げだ」
言ってドアに向けて立ち去ろうとする神田。そんな神田にコムイからの言葉が降ってくる。
「神田くん、キミは命を軽視しているね」
「あぁ?」
これ以上鋭くならないというほどに表情が険しくなる。
「キミと一緒になるエクソシストは生存率が低い、それはキミが連携を取ろうとしないからだ」
「弱い奴と連携してなんになるんだよ?」
コムイは神田に言い聞かせるように話す。
「いいかい? ボクらは助け合わなきゃ。ボクたちは絶対的に不利なんだよ」
それに、とコムイはしゃべり続ける。
「キミが連携を学ぶには彼女が適任だと思ってね」
「まぁ、こいつは弱すぎて使い物にならないから俺にぴったりってことだろ」
言い返そうと口を開いたアリシアを制して、あざ笑う神田にコムイは首を振る。
「そうじゃない。彼女はすごいんだよ」
その言葉に神田は鼻で笑う。
「使えないって話がちらほらでているのにか?」
エクソシストの陰口なんてどこでも聞こえてくる。アリシアも当たり前のように言われているのだ。アリシアは神田をにらみつけるが彼はものともしない。
「AKUMA破壊に対してはあまりいい成果を出してるとは言えない、けどね……」
「一緒に出向いた人たちの生存率は高い、どうしてだと思う?」
もうほとんど面倒そうに神田は言葉を吐き捨てた。
「知るかよ」
「それをキミは彼女から学ぶべきだ。いいね、これは室長命令だ」