第1章 はじまり
「で、なんなんですか? 重要な話って?」
足を組み替えながら、アリシアはイラついた態度で長椅子に座っている。
それは神田も同様で二人は同じ椅子に座ってはいるが、端と端に座っていた。
「さっさとしろよ、リーバー」
神田も大分イラついている。
だが、当の呼び出した本人であるコムイは机に突っ伏して動かない。寝ているのだ。
リーバー班長が揺り起こそうとしているが、全く起きる気配がないのだ。殴っても効果はない。
リーバーもため息をつく。
「ていうか一時間前にあんなに元気だった人がなんでこんな寝てるんですか!」
「俺も聞きたい……さっきまで起きてたのに」
リーバーがくしゃっと頭をかく。リーバーの目の下には濃いクマが出来上がっている。
じれたのか神田がリーバーに対して問いかける。
「内容は聞いてねぇのかよ」
「俺が聞いたのは二人に話をするからってだけだったんで、内容は聞いてないんだよ」
イラついた息を吐く音が三つ重なる。
「仕方ないですね」
アリシアがすっと立ち上がり、コムイのそばに歩み寄る。そして小さな声でささやいた。
「リナリーが神田と結婚するって言ってますよ」
神田が目を丸くする。リーバーは震えあがった。
「な!?てめっ!」
「シャレにならんことを!?」
神田が立ち上がる瞬間、同じようにコムイが幽鬼のようにふらつきながら立ち上がった。
息をのむ三人。手には銃器が携えられている。
「やばい!」
リーバーが慌てて止めにかかる。だが、それも手遅れだった。
「僕のリナリーと結婚するなんて認めなーい!」
一気に銃口から火が噴き出す。だが、神田に向けられるだけでなく、いたる所に銃創を作っていく。錯乱しているのだ。
「アリシア! お前が責任もって止めろ! お願い止めて! 止めろください!」
リーバはコムイを抑えるので精一杯だ。神田は我関せずと避難したまま動こうとしない。
「……わかりました。標的を見定められないなんて計算外ですね」
血走った目でリーバーが怒鳴る。
「そもそも試そうとすんな!」