第1章 プロローグ
「“旅の王子よ、そなたは姫を好いていると言うが、その言葉に偽りはないか?”」
偉そうに上から見下ろす王様に、私は内心苛立ちを抱きながらも彼の話す物語の続きに耳を傾ける。
「“姫は私の心の幸い。姫の愛さえあれば、いかなる試練も喜びに変えることが出来ます”」
この時、王子様は一体どんな気持ちだったのだろう。
それでも、姫を愛する気持ちに偽りは無かったんだろうな。
「“ならばはるか遠く、この世の果ての外国へ旅立つがいい。無事戻ることがかなえば、その時そなたの言葉を信じよう”
こうして王は、王子を遠い国へ追放してしまうのでした……」
悲しい展開に彼の声も同様に沈む。
次が聞きたいような、聞きたくないような。
まるで私自身がお姫様になったような心地で、綴られる彼の言葉に聞き入っていた。