第1章 プロローグ
「遠い国へ旅立つ日、悲しみに打ちひしがれる姫に王子はこう告げました。
“私は旅立たなければなりません。でも、どうか…悲しまないでください。私の心はあなたのもの。たとえ世界の果てからでも、いつか必ず迎えに参ります”」
小さい男の子の手が、再び絵本をめくる。
そこには十字架の前で手を組み、祈りを捧げるお姫様の姿が描かれていた。
「それから姫は毎日、森の教会で王子の無事を祈りました。いつか、王子が迎えに来る日を信じて……」
そこでふと、彼の声は途切れる。
そして頭上を見上げ、キラキラと七色に光り輝く窓を指で指した。
「……見て、あの窓。ステンドグラスっていうんだ。この本のお話と同じだ……」
彼の目が窓から絵本へと戻る。
そこでは目を閉ざし、切実に祈りを捧げるお姫様。
彼女がいる教会にも、複雑な文様をしたステンドグラスの窓が背後にあった。