第3章 噂と真逆の彼
葉月くんは恥ずかしくないのかな? こんなことして。
いや、そうじゃないからこそ、恥ずかしげもなくこうして食べさせようとしてくれてるんだよね。
「い、いただきます」
クッキーと一緒に差し出される好意を無下にも出来ず、思い切って葉月くんの指からクッキーを口に含む。
恥ずかしさから目は開けていられなくて、ただ黙々とクッキーを味わっていた。
家で一応味見は済ませていたから、味は変わらないはず。
でも……なんでだろう?
「ん……美味しい」
「だろ?」
作ったのは私なのに。
どこか得意気な笑みを浮かべる葉月くんに、昨日よりも何故か一層美味しく感じた。
口内に仄かに広がるクッキーの甘み。
それが砂糖と同じくらいに、不思議と甘さを増しているようにも感じた。
「お前……クズが口の横についてる」
「え、どこ?」
「そこじゃない。……ここだ」
「えっと、こっち――…っ!」
葉月くんの顔が急に目の前に近づいてきて、全身が硬直する。