第3章 噂と真逆の彼
「これは……?」
「クッキーなの。葉月くん、甘いものは苦手なイメージがあったんだけど、私にはこれ位しか思い付かなくて。あ、一応……甘さは控えめにしてあるから」
「……開けていいか?」
「どうぞ」
私の手から袋をそっと受け取り、ラッピングのリボンが葉月くんの手で解かれる。
ガサガサと中身の一つを取り出し、葉月くんは何故かジッ…とクッキーをしばらく見つめていた。
も、もしかして……やっぱり甘いものは嫌いだったのかな?
「…………猫」
「……え?」
どうやら、猫の顔の形が葉月くんは気になっている(?)らしい。
クッキーなんて作るの久しぶりだから道具が中々見つからなくて、たまたま見つけたのがこの猫の型抜きだけだったんだけど。
「葉月くんは……猫嫌い?」
恐る恐る尋ねると、葉月くんは横に首を振る。
「いや……どちらかと言えば、好きだ」
「!!」
ふわり、と。
愛しいものを見つめるような眼差しで、柔らかく微笑むその横顔に目を奪われる。
葉月くんって、こんな風に笑うんだ……。