第3章 噂と真逆の彼
この時から不吉な予感は抱いていた。
それが的中しないことを私は祈っていたのに……部屋に戻って早々、予感が現実のものとなる。
~~♪~♪~~~♪~
「あ、電話だ!」
着信音に設定していた着メロが鞄から奏でられ、慌てて携帯を中から取り出し耳に押し当てる。
「……もしもし」
「はいはい」
「……誰だ?」
「え? あの、伊瀬 桜ですけど……」
男の声音で問われて、とりあえず名乗ってみる。
着信相手も確かめず、条件反射で応答していたけれど……もしかして間違い電話?
つい最近買ってもらったばかりだから、この携帯番号はお父さんと尽以外の男の人なんて、知るはずも無い。
でもこの声。
どこかで聞いたことがあるような――
「…………」
「…………」
どう反応を返せばいいのか分からなくて。
互いにしばらく沈黙していた。
それから思い出したように、相手の男の人の方が先にこの沈黙を破った。
「あぁ、入学式の時……あ、俺、葉月」
はづき……葉月、葉月…葉月?
……って、まさか。