第3章 噂と真逆の彼
まだ始まったばかりで慣れない毎日ではあるけれど、葉月くんとこうして一緒に帰るのは今日が初めて。
内心断られるんじゃないかって、ヒヤヒヤしてたけど……誘いに頷いてくれて良かった。
だって今日は葉月くんにお詫びの品を渡したかったから。
――そもそもの原因は、うちのバカ弟。尽(つくし)のせいだ。
入学式を終えての週最後の登校日。
学校から帰宅した時から、嫌な予感はしていた。
「あ、姉ちゃん。お帰り」
「ん……ただいま」
小学四年生は土曜日はお休みだからと、ソファーでのんびりとゲームに勤しむ尽に出迎えられ、適当に鞄を床に下ろす。
そのまま冷蔵庫に向かおうとして、背中から尽に呼び止められた。
「あっ、そうだ。姉ちゃん」
「…? なに?」
「今日は俺に感謝しろよな」
「……一体何の話?」
「後で分かる」
ニヤリと笑うと、尽は再び手にしていたゲーム機に夢中になっていた。
なんなの、気味が悪い。