第2章 出会い、再会。
『王子は、必ず迎えにくるから……』
一瞬脳裏を過る、夢の記憶。
私はその声に導かれるように、そっと閉ざされた茶色い扉へと近づいた。
輪の形をしたノブを掴み、試しに引っ張ってみたけれど……やっぱり鍵が掛かっている。
「閉まってるんだ……」
一応何度か、押したり引いてみたりしたものの。
ギィと鈍い音を立てるだけで、扉は硬く閉ざされていた。
――キーンコーン…カーンコーン……
唐突に鳴り響く鐘の音。
腕時計を見て、針が示すその時刻に驚く。
「いけない! もうこんな時間?! 入学式の会場に行かなきゃ……」
くるりと踵を返し、そのまま歩き出そうとして――
ドンッ!!
「わっ!!」
何かにぶつかってしまった。
そのせいで体勢を保てなくなった体は、必然的に地面に尻餅をつく。
「いたた…………?」
太陽を遮り、地面に落ちる影。
勿論それは私の物じゃない。
私以外の誰かの気配に顔を上げてみれば、差し出される爪の整った男の人の手。