第9章 フィアーキング
side 真斗
思い出作りとして、俺と神宮寺・・・そして心羽とやって来たのは音楽カフェ。
正直な話、出来るならば心羽と2人で来たかったのだが・・・神宮寺から「お前とエレだけだとぎこちなくなるだろ」と言われてしまった。
・・・まあ、色恋事に関しては俺より神宮寺の方が数段上なのは確かだから納得してしまった。
・・・俺達2人は、明日から財閥の事情で実家へ戻らなければならない。
だから、少しでも多く心羽と時間を過ごしたい。それに関しては互いに意見が一致している。
だから、少しならば神宮寺も心羽と接するのに口を挟むのはよそう。・・・・・・と、思ったのだが。
「おっと・・・エレ、クリームがついているよ」
『ん・・・ここ?』
「そこじゃなくて・・・ここだよ」
すっ・・・
・・・ちゅ、
『・・・・・・う?』
「ふふ、きょとんとした顔も可愛いよ。
これで聖川が居なければ甘いキスの一つでもしたいところだけど・・・」
「っっ・・・神宮寺、貴様・・・!!」
『・・・??
あ、あれ廃盤になった音源・・・!』
「聞いておいで?」
『行ってきまーす』
喫茶店の一席で神宮寺が心羽の口端に付いたクリームを軽くリップ音が聞こえるくらいに唇をつけて、付いていたクリームを取る。・・・くっ・・・これだからこの男は・・・っ。
先程までブルーベリーのショートケーキを頬張っていた心羽が完食したらしく、気になった音源を見つける。神宮寺が行って来いと勧めれば、心羽は嬉しそうに席を立った。
その姿をいつになく穏やかな表情で見送る神宮寺に、俺は声をかけようとした。
「・・・アイドルにとって恋愛は御法度、とでも言いたいようだな。聖川」
「・・・・・・解っているのならば、過多に心羽と接するな。貴様の接し方はまるで・・・」
「恋人や想い人に対する接し方に見えたのなら、光栄だね。・・・オレはお前とは違って、どうも行動に出やすいようだ」
「・・・・・・、!」
「・・・・・・悪いが、オレは心羽をそう言う対象として接しているつもりだ」
前言撤回。
神宮寺のこの目は、本気のそれだ。