第8章 スイッチシンガー
プールでの一件から三日後。
私は四ノ宮くんと来栖くんに新しく作った曲を聞いてもらっていた。
──泣いて笑ってよ SOS 僕は 君は 僕は
「わあ・・・なんだか不思議な歌ですねぇ♪」
「・・・ほんと、お前ってポンポン曲作るよな。
でもすげーよ、なんつーか・・・水っぽい?」
『お、やっぱそう思う?
なんかふと思いついたんだよね』
「思いついた、って・・・いつだよ?」
『えーと、あれだ。
溺れた時』
「え・・・溺れた時、って・・・プールでですか?」
「お前な・・・・・・なんつー時に思いついてんだよ、!」
『だってそんな事言われたってさ、思いついたもんはしょーがないでしょ。割といい歌になったんだし、結果オーライだよ』
「ったく・・・まあ、いつでも曲作れるってすごい事だよな。・・・っと、音也とサッカーする予定だったんだっけ。
そろそろ行くな?」
「はい、行ってらっしゃい。翔ちゃん」
『行ってらー』
来栖くんと一十木くん、アクティブだからスポーツ好きだよね。
さて、と・・・これからどうしよっかな。
「・・・あっ、そうです。コノハちゃん」
『ん・・・?
どしたの、四ノ宮くん』
「あの、明日の自由日なんですけど・・・僕達Aクラスとコノハちゃんが変装してお出掛けする事になったんですよ〜」
『・・・・・・え?』
「早乙女せんせぇが言ってた通り、女装してみんなでお出掛けするらしいですよ?」
な ん で す と ! ?
え・・・じゃあAクラス負けたの!?
だって引き分けだったのに・・・てか、引き分け状態のままプールぱっかーんってなったはずだよね・・・?
・・・でも四ノ宮くんが嘘つくなんて(間)考えられないしなぁ。
『女装か・・・私女なのに』
「月宮せんせぇがとっても楽しみにしてましたよ♪」
『う"・・・。
今の髪型とか服装にやっと慣れてきたってのに、またオシャレするのか・・・』
「僕達は負けちゃいましたけど、月宮せんせぇのメイク技術なら期待大だって音也くんも真斗くんも楽しみにしてましたよ~」
『・・・えー・・・』
「セシルくんなんて、すっごくワクワクしてましたし」
『・・・なんだろう、あの子なら女装しても男装してもワクワクしてる気がする』
(ウミユリ海底譚/ナブナ)