第8章 スイッチシンガー
トキヤが一十木くん達を呼びに行って、数分後にみんなが来てくれた。
相当心配されてたみたいで、私は放課後も終わって夜の8時くらいまで保健室のベッドで横になっていたんだとか。・・・単純計算で軽く5時間は気を失ってたのか。
もう夜だって事もあって、その日はそのまま解散した。
すると来栖くんから話があるってLINKで言われて、休校日の土曜日に来栖くんと四ノ宮くんの寮部屋に呼び出された。
『・・・砂月・・・?』
「なんつーか・・・那月のもう一つの人格みたいなもんだ。そいつが砂月って名前なんだけど・・・そいつがとんでもなく凶暴っつーか」
『もしかして、私がプールでちらっと見た時に四ノ宮くんが四ノ宮くんじゃないように見えたのって・・・』
「・・・間違いなくそいつだな。
俺も詳しくは知らねーんだけど・・・那月のメガネが外れたら要注意だ。あいつメガネ外れたら出てくるからさ」
『なにそのメガネの重要性・・・!
あのメガネ、そんなキーアイテムだったんだ』
「いや、レンズついてたらあのメガネじゃなくてもいいんだ。
サングラスとか、おもちゃの度が入ってないメガネとか」
『・・・メガネって奥が深い』
一通り説明されて、来栖くんは「・・・それで、だ」と話を再開する。
「問題は那月が砂月の事を知らないってところなんだよ・・・」
『・・・え、それって・・・主人格が入れ替わったって事?』
「多分そんな感じだ。
砂月になってる間は何にも覚えてないみたいだし、でも砂月は那月の中に居る時の事は覚えてるみたいでよ」
『えー・・・。
・・・つまり、四ノ宮くんはメガネかけてればその砂月くんって人格にならないけど砂月くんは四ノ宮くんの目を通して見てる・・・でもメガネが外れたら砂月くんが出て来る、けど四ノ宮くんはその間の事は一切覚えてない・・・って事?』
「ああ・・・。
昨日の事も、何も覚えてないみたいなんだ」
『・・・なるほどね。
・・・・・・でも、なんでそんな奇想天外な事を私に?』
こう言うのって、仮パ(仮パートナーの略)のみんなに言った方がいい気がするのは私だけかな。
私がそう聞けば、来栖くんは視線を俯かせた。