第8章 スイッチシンガー
『・・・・・・んぁ・・・?』
「・・・!
心羽・・・、?」
『・・・いち、のせ・・・くん?』
目が覚めたら、一ノ瀬くんが居ました。
ビックリしてる様で、今にも泣き出しそうな顔。
『・・・・・・あれ・・・私・・・、・・・』
「・・・っ、の馬鹿!!」
『・・・えぇー・・・』
怒られました(´・ω・`)
どうやらご立腹の一ノ瀬くん。
え、私なにかしたっけ?
・・・えーと、確か・・・・・・。
『・・・あ・・・そっか、溺れたんだっけ』
「そうですよ、翔がプールから離れろと言ったのにも関わらずにボーッとしているなんて・・・心羽は馬鹿ですか」
『失敬な・・・。
四ノ宮くんを呼んだつもりが津波を呼んだだけだよ・・・。我ながらにあんな才能があったなんてね』
「・・・まったく、どこまで人を小馬鹿にすれば気が済むんですか。貴女は」
『・・・はは、ごめん』
説教タイムが終わったらしく、一ノ瀬くんは心底ほっとしていた。
・・・って、ん?
『・・・あれ?』
「・・・今度はなんですか、心羽」
『あ、やっぱり』
「は?」
『名前』
「・・・名前?」
『うん、一ノ瀬くんから下の名前で呼ばれるのってなんか新鮮かも』
「・・・したの、なまえ・・・・・・?
・・・・・・・・・っ!?」
完璧に不意打ちを食らったようで、一ノ瀬くんははっとした。
「こ、これは・・・その・・・っ」
『ん?』
「・・・忘れてください」
『・・・ん?』
「ですから、忘れてください・・・」
『え、なんで?』
「・・・貴女だって、私の事を苗字でしか呼ばないじゃないですか」
観念したように、と言うか吹っ切れたように言ってきた。
あ、確かに・・・。自分でも納得する。
『んじゃ、これからトキヤって呼ぶね』
「っ!・・・・・・、っお・・・」
『・・・お?』
「音也、達・・・っ呼んで来ます!」
がちゃっばたん
・・・・・・えー。
何やら慌てて出て行ったよ一ノ・・・じゃなくてトキヤ。どしたんだろ・・・?
それにしても・・・無駄の無い退出だったな。