第1章 ニューゲーム
くっだらない。
ヒソヒソ陰口が聞こえる中、日向先生が溜め息をついた。
溜め息つくと幸せ逃げますぜ兄さんや。
そんなこんなで、ホームルーム終わり。
ここ、早乙女学園はアイドルと作曲家のたまご達を育てる芸能専門学校だ。
私が早乙女学園に通う事になった理由は至ってシンプルで、音楽が好きだから。
思い浮かんだ音符でメロディラインを作って、真っ白な譜面に描く。
人間一人一人に人生があるように、曲一つ一つに世界がある。それを、歌詞に起こすだけ。
それが私の好きな事。
作るのも、それを歌うのも大好き。
「東椰、ちょっといいか?」
ホームルームが終わって十分間休憩。
音楽でも聞こうとスクバからスマホを取り出した時に日向先生に呼ばれた。
『日向先生。
はい、なんでしょうか』
「授業なんだが…お前どっち受けるか決めたか?」
『授業…』
「決めてないなら、アイドルコースの方受けてみないか?」
『別にいいですけど…その理由って?』
「あー……学園長が、な
─「Miss.東椰には…アイドルコースで覚醒してもらいマース!!」
…って言い張ってんだよ」
『……自己紹介の特技披露をパスしたペナルティって訳ですか』
「まあ、そんなとこだ」
『…早乙女学園長も無茶ぶりしますね、覚醒しろとか……。わかりました、授業はアイドルコースを受けます』
「おう。
あー、それともう一つ。これは俺個人からなんだが…」
『?』
「例の…入学選考で提出したっつー歌を聞いてみたいんだが」
『入学選考…。あー、あれですか』
「ああ。
放課後、授業が終わったら第3レコーディングルームに寄ってもらえるか?」
『第3…??』
「…あー、お前まだ寮の部屋と所属クラスの教室の場所しか把握してないんだったな」
第3レコーディングルーム、と言われてきょとんとしたら日向先生は「どーすっかな…」と呟いた。