第1章 ニューゲーム
ガラ
息をひとつついて、自分の所属クラスへ入る。
ホームルーム前と言うだけあって視線は心地よいものじゃない。
うわ、あんま見ないでマジで。
でもこれを気にしてちゃなにも始まらない。
私は気にせずに指定された席に歩いた。
ガラっ
「うーっす、そろそろホームルーム始めるぞー」
あ、日向先生。
三日前に初対面を果たした日向龍也先生と目が合った。そしてアイコンタクト。あーやだな…自己紹介とか萎える。
「あー、ホームルーム始める前に…ほら、前出て来い」
『…………』
無言で肯定して、教卓に向かう。
なにも前出なくても…と思ったけどまあいっか。
「ちょっと事情があって、3日遅れで入学して来た東椰だ」
『……東椰心羽。よろしく。
シンガーソングライター目指してる』
「…っておいおい、それだけか?」
『自己主張苦手なので』
「あー…じゃあ他の奴らみたいに、なんか特技披露してみたらどうだ?」
『…特にこれと言って無いですけど』
「お前な…」
ごめんよ日向先生。
でも本当に思い当たるような特技はこれと言って無いのですよ。
自己紹介も終わったし、もう席に戻っても…うっわ、視線がめんどくさい。
ヒソ…
「なにあの子……」
「シンガーソングライター目指してる割には特技無いとか…」
「ありえなくない?って言うか普通愛想よくするよね」
「前髪長くて表情もよく解んないし…」
「もしかして、コネなんじゃないの?」
「あー、言えてる。だから遅れてきたのかもね」
…うん、わかりやすい陰口だこと。
だがしかしそんな陰口でカッとなる私では無いのだよ。
どーでもいいけどスカートやっぱ慣れないや。