第3章 オーバーフロー
side トキヤ
学園長室からあっという間に逃げられた。
・・・二度も激しめなワイヤーアクションに付き合わされている東椰さんが流石に気の毒になってきましたね。
そもそも音也が計画性も無しに学園長室へ突入するから厄介な事になるんですよ。第一、音也はもう少し慎重に行動すべきなんです。なんであんな行き当たりばったりな行動を取るんですか。まるでイノシシですよ、イノシシ。誰ですか、わんこ属性とか言ったのは。
・・・おっと、話が逸れましたね。
「・・・見つかりませんね。
ヒントの場所はここで合ってるはずなのですが」
「どうするよ。このまままた学園長の所に辿り着いたとしても・・・またワイヤーアクションで逃げられたら流石にグロッキーになるぜ?」
「うん・・・おちびちゃんの言う通りかもね。・・・・・・??
何か、聞こえないかい?」
──守っていく 誓う言葉はいらない
誰かのせいにした日々を破り捨て──
レンの言葉に、私達は耳を澄ませる。
すると、どこからともなく音が聞こえてくる。
・・・デジャヴですか。
以前もこうやって聞こえてきましたね。
「・・・本当だ。
でもなんでこんな森の中から?」
「・・・これは、・・・恐らくあちらでしょうね」
「・・・・・・なるほどね。
Aクラスの誰かに先を越されたのかな」
「ま、取り敢えず行ってみようぜ?」
音楽が聞こえてくる方向を目当てにそちらに向かう。
近づくにつれて、目的の人物が見えてきました。
・・・やはり彼女でしたか。
学園長の言っていたように、シャウト系の歌にも聞こえますが・・・これは・・・。
「あ、トキヤ」
「音也。
・・・と言う事はやはり・・・」
「いや、俺達も東椰の曲を聞きながらここに辿り着いたんだ」
「わぁ・・・!
キラキラして、楽しそうですね~」
四ノ宮さんの言葉に、彼女を見る。
日没まであと少し。
若干夕日混じりの日差しが木々の隙間から彼女を照らしている。・・・初めて聞いたあの曲と違う、力強い歌声。
──この心は誰よりも熱く燃やし続けよう
消えないように──
何故か、日向先生に言われた言葉を思い出してしまいますね。
ハート・・・。・・・私の歌には無いもの、ですか。
(butterfly core/VALSHE)