第2章 エンカウント
『♪〜〜………。
…ふう』
歌い終えて、気になったところを五線譜ノートに書き込む。
ちなみに今回のはテンポが早すぎた。
これじゃ歌いにくいし、歌えたとしても今みたいに早口になって聞き手が聞きにくい。
『……あーでもここは裏声でギリいけたからも少し下げて…[ガサッ]……?』
ぶつぶつと呟きながら曲を作っていると、どこからか草木を掻き分けるような音が聞こえた。
イヤホンを外して音が聞こえた方を見ると、葉っぱを数枚頭にくっつけてる青い髪の男子が居た。
男子は私と目が合うと、ハッとして気恥ずかしそうに目を逸らした。
「………、あ……すまない」
『…えーと、なにが?』
「その…盗み聞きのような真似をしてしまったから」
『あー…別にいいけど。謝ってくれたし…。
ちなみにいつから聞いてたの?』
「……恐らく、サビに入る手前からだと」
『…あーじゃあBメロからか』
「思わず聴き入ってしまったが…黙って聞いていた事を謝らせてくれ、すまなかった」
『別に気にしなくてもいいよ。
と言うかそんなに謝られても…』
「しかし…」
『とにかく、私は気にしてないからそんな申し訳なさそうな顔しないで』
私がそう言えば男子は渋々了承した。
会話が途切れた事だし、そろそろ部屋に帰ろうと思ってルーズリーフを五線譜ノートに挟んで立ち上がる。
すると男子は慌てて私に近寄ろうとした。
…けど、それよりも早く誰かが男子へと接近した。
ガサガサガサっ!
「なりませぬぞ坊っちゃまぁ!!」
「、じぃ。出て来るなと言っただろう」
「いいえ、じぃの目は誤魔化せませぬぞ!
どこぞの馬の骨とも知れぬ小娘に近づくなど…じぃは見過ごせませぬ!」
「それは言い過ぎだぞ、じぃ」
なんだかよく解らないけど、長くなりそうな口論が始まる。
空気的に邪魔かなーと思って私はそっとその場を後にした。