第2章 エンカウント
早乙女学園に入学して、五日目。
月末にあるレコーディングテストに向けて、私は今日も今日とてレコルームの予約に来ていた。
…が。
運が悪かったらしく4つあるレコルームは予約済みだった。
『んー……今日は歌うつもりだったのにな』
仕方ない、学園の敷地内で人気のない所を探してそこで歌おっと。
この早乙女学園は、とにかく広い。
クラス自体はSからDの5つしか無いものの、そのクラス教室もピアノが丸々1台を余裕で置けちゃう。
図書館やら食堂(どこぞのファミレス規模)やら、レコーディングルームももちろんの事。楽器と言う楽器がほぼ揃ってる音楽室まで完備されてる。
他にも、学園敷地内には噴水やら森やら湖やら…果てには遊園地まである始末だ。
『、と……いい感じの場所見っけ』
そんなこんなで何気なく適当に散策する事三十分。
森を抜けて開けた所に出た。
どうやら湖に着いたみたい。
周りを見渡して誰も居ないのを確認してから課題曲を自分なりにアレンジした曲を入れてるUSBをスマホに繋いで、そのスマホにイヤホンを繋げる。
『よし、やるか。
………スゥ…』
息を吸って、歌詞を書いたルーズリーフを手に持って私は歌い始めた。
渡された課題曲の原曲は各自でアレンジを入れてもOKとの事だから私はギターとベースを使ってみた。
ロックテイストも取り入れながら、それでいてJ-POPも入れた。
途中で感情移入し過ぎそうになったんだけど、どうにかこうにか形にはなった。
授業自体はアイドルコースを受けてるけど、私は本来シンガーソングライターを目指してるのであってパートナーは組まない事にした。
その事は日向先生にも早乙女学園長にも伝えてるし、許可も貰っている。
……歌さえ、楽しめれば。
音楽さえ作れてれば、私は一人でも充分なんだ。