第12章 アビリティー
「っ・・・おい、どう言う事だ」
『えーと、早乙女学園長が砂月くんに飲み込ませたのは・・・なんだっけ、正式名称複雑すぎて・・・』
「特殊人格完全分離隔離生存薬デース」
『・・・そう、その特殊(ry薬なんだ。
ほら、トキヤとハヤトの一件で使われたやつね』
「・・・もしかして、そのお薬で・・・僕とさっちゃん・・・離れたんですか?」
『そゆ事。
人格だとしても、那月くんは那月くん。砂月くんは砂月くんだし』
あまりにも突然の事で混乱してるのか、砂月くんがいかにも申し立てしそうな剣幕になり始める。
おおっと、これはヤバい・・・。
『那月くん、私那月くんの音楽好きだよ』
「・・・っえ・・・?」
『ふわふわしてて、聞いてるとあったかくなってくる・・・でもそれでいて、どこか聞いてると安心する』
「・・・心羽ちゃん・・・」
『だから、那月くんには前に進んで欲しい。
砂月くんも、ね』
「!・・・俺が、前に進む・・・?」
『過去を引き摺ってる私が言えるクチじゃないんだけど、那月くんと砂月くんはきちんと前に進めると思うんだ。
・・・まあ、手段的に強引になっちゃったけどね』
「っ・・・ふざけんな・・・、俺は・・・!」
「・・・さっちゃん、・・・心羽ちゃんを怒らないであげてください」
「・・・那月・・・、?」
「・・・・・・僕・・・心羽ちゃんの、言う通りだと思うんです。
僕がどうしようもなく悲しくなったせいで、さっちゃんは生まれて・・・僕は、いつの間にか甘えてしまっていたんです」
「何言ってんだ、甘えていいに決まってんだろ・・・!」
「さっちゃん。
・・・それじゃ、ダメなんです。
・・・・・・僕、さっちゃんにとっても感謝してるんです。いつも僕を守って、支えてくれて・・・」
「っ・・・当たり前だろ・・・それが、俺の生まれた意味なんだ」
「・・・・・・でも・・・僕はもう大丈夫です。
前に、進まないと・・・それに、さっちゃんは僕を理由に生きて欲しくないんです」
「・・・っっ!」
那月くんが真っ直ぐな目で見ながら、砂月くんをぎゅっと抱き締める。
思いがけない言葉に砂月くんは観念したように笑った。