第12章 アビリティー
『確かに・・・那月くんは先生に裏切られたのかもしれない。
でも・・・今の那月くんには、みんなが居るじゃん』
「・・・はっ、他人にどうやって悲しみを受け止められるって?」
『受け止めるだけじゃダメだよ。
悲しみを受け止めて、それを乗り越えなきゃ前に進めないよ』
「・・・・・・乗り越える、だと?」
『うん。
・・・だって砂月くんは那月くんの影でしょ?
影って事は・・・あー、言い方悪くなっちゃうけど那月くんの一部って事だし。那月くん自身で、ちゃんと悲しみを受け止める事が出来るんじゃないかな?』
「・・・那月自身が、受け止める・・・?」
私の言葉を復唱するように、砂月くんが呟く。
『那月くんが受け止められなくても、誰にも受け止めて貰えなくても・・・私は受け入れるよ。
那月くんと、砂月くんを』
「・・・・・・、っ!?」
『・・・さて、ここでひとついいかな砂月くん』
「・・・・・・、あ?」
『私最近早乙女学園長に思考が似てきたんだよね。不可抗力だけど』
それまでシリアスだった空気を割くように、私が話題を180度変える。
一方の砂月くんは私の言葉に理解出来なくて何言ってんだこいつみたいな目で見てくる。
『てな訳で早乙女学園長、よろしくー』
ザパァァアンッ!!!
「ぶるぅあぁぁあぁあああああああ!!!」
「っ、な・・・!?」
「どっせぇぇい!!!」
ひゅっ・・・
ぱくん
「、っ・・・!
っげほ・・・っ、はっ・・・・・・おい、今なに飲ませ・・・・・・、っ!?」
っぽんっ☆
「わっ・・・!
・・・え・・・・・・、えっ?」
「・・・っっ・・・な、那月・・・?」
ほーら見ろ、やっぱスタンバってたよ早乙女学園長。
私が一声早乙女学園長に呼びかければ、波風が全く立っていなかった海から突如早乙女学園長が飛び出してきた。何やら奇声を発しながら。そしてそのまま何かを砂月くん(の口)目掛けて全力投球。
その何かを砂月くんが反射的に飲み込めば、次の瞬間いつぞやのコミカル極まりない音。
『・・・お手数かけますね、早乙女学園長』
「フフフのフ・・・気配を消すのはミーの得意分野なのでーす」