第23章 段階
二人は、何も言わずに抱きしめ合っていた
俺は、その場にいるのが申し訳なく
二人を見ないように背中を向けていた
村上「アホ、会いたかったわ」
「ごめんね、しんご、でも消えないでいてくれて
ありがとう」
女は、嬉しそうに雛の頬を自分の両手で包む
村上「お前のおかげや」
横山「う、ううん....」
俺は待ちきれず、咳払いをした
村上「あ、す、すまん」
雛は俺がいる事を思いだすと
慌てて女から離れた
それを合図に女の顔付きが変わり
俺に真剣な目線を送ったのだ
「初めまして、時間がないので
要点だけお話をしますね」
横山「おん」
俺は、素直に頷いた
「お嬢様は、また監禁されております
しかし必ず私たちが助けますので
しばしお待ち下さい」
横山「それだけを伝えるために
こんな大がかりな事を?
ちゃうやろ?」
「流石ですね」
女は、俺に少し意地悪気に笑った
「ある方が、どうしてもお会いしたいと
いいましたので、試させて頂きました」
そう言うと女は頭を俺に下げると
頭の後ろに人影が見えたのだ
俺は目を細めると、そこに現われたのは
白髪の老人だった
「手の込んだ事をして、すまなかった....」
聞こえにくい小さい声で話す
横山「いや、ええけど」
「私の可愛い娘は慈愛が強くってな
しかし息子は正義感が強く
いつも二人の意見が合わないんだ」
横山「.....」
俺は老人が何を言いたいのかと意図を探っていた
「娘は、まだ貴方と一緒になるには早すぎるんじゃよ」
横山「それは?」
「まだ、修行中の身だと言った方が早いかな?」
老人は静かに笑った
横山「このまま別れろと?」
俺は老人を強く睨みつけた
老人は何も言わず、傍に立っている女を手で呼んだ
「これを....」
女は俺に一つの箱を渡した
横山「これは?」
「もし、その忌わしい身体から解き放たれたければ
箱を開ければいい」
老人は静かに俺に言った
俺はその箱を静かに見つめた
雛も興味があるのか横から箱を覗き込んでいた