第23章 段階
空には月が寂しそうに上っている深夜
俺と雛は屋敷のある場所の前に立っていた
マルに言われた場所で俺たちは待っていた
雛の女が眠っている墓の前だった
横山「ここが物語の最初か....」
俺は小さく呟いた
村上「なぁ、何でここが0なんや?」
愛する女の墓の前に立ち雛は
不思議そうに俺に聞いてきた
横山「マルの話では、その猫が俺たちを
この屋敷と結びつけたらしい」
村上「そうなんか....」
横山「マル以外に誰も記憶はないけど
マルは、その事を話したくないみたいやけどな」
村上「.....」
雛は静かに座り込んだ
横山「雛?」
俺は、心配になった
雛がこの女をどれだけ愛していたか知っていたから
自らの命すら消そうとしたのも
村上「....大丈夫や
もしかしたら会えるんかと思ってもうて」
横山「そうか....」
俺は静かに座っている雛の後ろに立っていた
村上「結びつけた事が0なんか?」
横山「屋敷に来た事によって
俺らのこの身体の話が始まったからやて」
村上「ふ~ん」
横山「その結んだ奴の眠る場所が、始まりの場所や」
村上「ややこしい、クイズやな」
雛は墓を見つめながら言った
俺は小さく笑っていた
村上「アイツ、会ったら何ていってくれるんやろ
今の俺を褒めてくれるやろうか?」
雛は辛そうに笑っていた
横山「さぁ、俺は猫でしか会った事ないからな」
村上「そうやったな」
雛は寂しそうに言うと
うなだれるように俯いてしまった
その時だった、俺らの肌にも分かる
少し気持ちの悪い空気が流れ込んできたのだ
俺と雛は警戒するように身体に緊張が走った
「し~んご!」
俺らの緊張を破るかのように
明るい女の声が後ろからしたのだ
俺と雛が驚きながらみると
明るい笑顔の女が嬉しそうに立っていた
雛は何も言わずに、女を強引に抱きしめたのだ
抱きしめながら雛の目には涙がにじんでいた