第19章 悲哀
俺はマルの気持ちを考えながら
部屋に向かって歩いていた
その後ろから大倉が走って来た
大倉「横山君、少しだけいい?」
俺は足を止めて振り向くと
申し訳なさそうに大倉が立っていた
横山「なんや?」
大倉は少し間を置くと
何かを決するように俺に言った
大倉「もし、彼女が不思議な力があるなら……
助けて欲しいと願うのは間違いだろうか?」
大倉の願いは、俺には直ぐに分かった
俺に噛まれた男を助けたのを見ているのなら
大倉の眠っている彼女を助けられるかもと
思ってもおかしくはない
横山「まぁ、本人に聞いてみな分からんが」
大倉「そうだよね…」
大倉は悲しそうに俯くのを俺は見て
横山「今から、話に行くか?」
大倉は少しだけ微笑むと
俺と一緒に歩き出した
二人で階段を上がりながら大倉は俺に言った
大倉「マルもきっと分かってくれるよ」
その言葉に俺は小さく微笑んで
横山「お互いに、女には苦労するな」
大倉「苦労なんかじゃないよ
彼女の人生を僕が変えてしまったのだから…..」
大倉の瞳が悲しそうに揺れていた
横山「今の俺なら思うな
お前の彼女は幸せやったと思うで
いまだにお前に愛されているんやからさ」
大倉「横山君…..」
大倉は嬉しそうに俺に微笑んだ
その時だった
大倉と俺は僅かな小さい音が聞こえたのだ