第9章 支配
自分の支配している感情を一人で抑えたかったからだ
しかし、その後をマルが追って来たのだ
丸山「横山君.....」
俺は、声に反応して静かに足を止めた
マルはゆっくりと息を整えながら俺の前に立つと
丸山「ちゃんと気付いてるよね?」
横山「......」
俺はマルが何が言いたいか分かっていた
しかし、それを口にするのを躊躇った
丸山「彼女の正体を?」
俺は無言でマルを見つめ続けた
丸山「俺らと対極にある人
油断すると俺らは消されてしまう.....」
横山「.......」
丸山「僕には、なぜ彼女がここに来て
僕たちに色んな事を教えてくれるのか分からない
でも、絶対に油断はしてはいけない」
マルは突然力強く俺の手を握った
横山「安心しろや
俺は誰に対しても油断はせんよ」
俺の返事にマルは寂しそうな表情を浮かべた
丸山「ねぇ、いつまでそんなに頑張るの?」
俺にはマルの言ってる事が分からず
顔をしかめた
横山「何がや?」
俺の返事にマルは俯いてしまった
こんなマルは何も言いたくない時だ
だから俺は
横山「これが俺や」
そう告げると
冷たく丸山の前から足を進めて
その場を離れてのだ
俺自身も分かっていた
俺が俺でなくなっている事は
誰よりも、あの女を俺自身が求めている事を
俺が一番分かっていたのだ
愛してダメなヤツに心が引かれてる事も
家族を危険な目に合わせてる事も
しかし俺自身
自分で処理できない感情に支配されていた
あの女は俺らのとっては
救いなのか
それとも破滅なのか
今の俺らには分かるはずもなかったのだ