第2章 Encounter
私は適当に返事をすると、外に出た。
玄関前には自転車に乗る翔君。
「今日は遅刻できねぇから、余裕もって行くぞ。」
「サンキュー!はい、お礼!」
私は菓子パンを1個翔君に投げて寄越すと、自転車の後ろに横乗りした。
翔君がワンピースなんて選ぶから、足開けないじゃん。
翔君は受け取ったパンを銜えて、食べながら自転車を走らせた。
私も後ろで菓子パンを頬張る。
歩いて学校に向かう生徒達を横目に、私たちは颯爽と校門をくぐった。
駐輪場に自転車を止めて、1限の教室へと向かう。
自転車で来た分、少し時間に余裕を持って教室に入れた。
「2限はバラバラか~。」
「学食で合流しよ。」
「はぁい。」
そんなやりとりをしてから1限を受ける。
初めての大学の授業。
必修科目だからきっと退屈、と思っていたけどそんなことはなかった。
教授の話すことは全部面白くて、思わず「なるほど」と言ってしまいそうなことばかり。
私も翔君も、キラキラした目で講義を聞いた。
2限はお互いに気になる授業を取っている。
教室を出たところで「じゃあ後で。」と手を振って別れる。
翔君と離れてみると、慣れないキャンパスに1人きりで、少し心細い。
2限の教室は真ん中あたりの一番端の席を取って、他の人に紛れるように講義を聞いた。
この後はお昼休憩。
学食で、と待ち合わせをしていたので、少し急ぎ足で学食に向かった。
「翔君っ!」
「小雨、お疲れ。」
学食の入り口で待っている翔君を見つけ、私は声を掛けた。
翔君も私に気付いて笑顔を見せる。
でも、その奥には見知らぬ人…。
「えっ、と…?」
「あぁ、ごめんごめん。コイツ、さっきの講義で仲良くなった…」
「二宮和也です。」
翔君がその人を紹介しようとすると、その人は翔君の肩に手を掛けてひょこっと顔を覗かせて自己紹介をした。
空いてる手を伸ばして握手を求めているようだ。
私は慌てて自己紹介を返す。
「あ、よろしく!気象小雨です!」
私も同じように手を伸ばして握手を交わす。
「小雨ちゃん、ね。」
「ニノ、コイツはやめておけ?彼女にしても幸せに慣れないぞ。」
ニコニコと私を見つめる彼に、翔君はため息混じりに哀れみの顔を見せた。