第2章 Encounter
コンコンコン
窓を叩く音がする。
でもダメだ…まだ眠い…。
コンコンコン
さっきより強く窓が鳴ってる。
わかった、わかった…あと3分待って…。
ドンドンドン!
「んぁーっ!!分かったよ!!」
割れんばかりに力任せに叩かれる窓。
私はあまりのうるささに布団を剥いだ。
カーテンを勢いよく開けると、私服に着替えてボストンバッグを肩に掛けた幼馴染。
思いっきり不機嫌な顔をしている。
私は鍵を開けて翔君を中に入れた。
「お前さぁ、目覚まし掛けたの?」
「…掛けた。」
翔君は部屋に入ると、ベッド脇の目覚まし時計を確認した。
起床予定からもう30分過ぎている。
私はまだパジャマのままで部屋をウロウロと歩いてみた。
「あと30分で家出ないと間に合わないぞ、1限。」
「うん~。」
寝起きの悪い私を見かねて、翔君はタンスからハンドタオルを出して洗面所に促した。
私はそれを受け取って、寝ぼけ眼で顔を洗って歯を磨く。
意識がスッキリしたところで部屋に戻ると、翔君は今日のお洋服を選んでハンガーに掛け、アイロンを温めてくれている。
「ほれ、着替えた着替えた。」
「えー、これ着るのー?」
「なんでだよ!いいじゃん、ワンピース!」
シフォン素材の花柄ワンピース。
翔君はこういうフェミニンな女子感満載なのが大好き。
私はそれを知ってて意地悪を言っただけ。
小さい頃から一緒だから、着替えも別に気にならない。
手早くそのワンピースに着替えると、今度は翔君の待つ鏡台の前へ。
「おねがいしまーす。」
「お任せあれ。」
高校あたりからアイロンを使い始めたのだが、朝に弱いのは昔からだから、こうして翔君にアイロンをやらせている間にメイクをしたりして時間短縮を図っていた。
最初は慣れなかった翔君も、今じゃすっかり巻き上手。
お互いの仕事に集中して、メイクも髪も完了。
ここまででちょうど30分くらい。
「よし、行くぞ!」
「じゃ、下で!」
翔君は靴がないので一旦自室に戻って、玄関で合流する。
私は居間を通るついでに菓子パンを2つ取る。
「お母さん、いってきまーす!」
「はいはい、いってらっしゃい!翔ちゃんにちゃんとお礼言うのよ~!」
部屋でバタバタしていたので、翔君が来てたことに気付いていたらしい。