第14章 Witness
店頭にドでかいポスターが貼ってあるのを見て、俺はお気に入りのアーティストの新曲がすでに発売されているのを思い出した。
確か、昨日発売になってたはず。
俺はそのCDショップに足を踏み入れ、新譜を手に入れるべくうろうろと歩き回った。
「ねぇじゃん…。」
ぐるっと2周はしただろうか。
俺の捜し求めるCDは影も形も無い。
お手上げ状態になった俺は、最終手段で店員に問い合わせた。
「あ~っと…昨日で売り切れてますねぇ。次の入荷は明日の予定なんで…お取り置きしておきましょうか?」
「あ、いいッス。ありがとうございました。」
駅前のくせにこんな小さいCDショップじゃすぐ売り切れて当然か。
俺は店員の「またお越しくださいませ~」という投げやりな声を背中に聞きながら店を出た。
「近くにもまだ2件あったか。」
俺はしばらく考えてから、最近めっきり寄ってなかったCDショップを思い出してそちらに歩みを進めた。
時間はまだまだたっぷりある。
のんびり回り道をして行こう。
「嘘だろ…全滅かよ…。」
たっぷり時間を掛けてCDショップを2件はしごしたが、どちらも売り切れ。
店内を2周してから店員に問い合わせるお決まりのパターンで、最後の店の最後の1周をしている時は心の中で祈っていた。
俺はがっくりと肩を落として携帯を見る。
まだ昼過ぎだ。
そういえばお腹も空いている。
近くを電車が通り、ガタンゴトンと大きな音を立てて通過していった。
「せっかくだし隣駅まで行ってみっか。」
今日は本当に何の予定も無い。
ノープランの旅もたまには悪くないな、と思いつつ、俺は電車に乗り込んだ。
隣駅は休日の昼下がりで人がたくさんいた。
俺はどこで昼を食べるか考えながら辺りをキョロキョロと見回してみる。
「まーなんでもいっか。」
俺は目に付いたファストフード店に向かって歩いていき、適当な注文をしてボケッと昼を済ませた。
外が見えるカウンターに座り、通り過ぎていく人たちをただ視界に入れては逃がしていく。
いろんなことを考えすぎたせいか、人ごみに紛れて小雨とニノが肩を並べて歩いているような気がした。
それはここ最近、俺があの2人から弾かれているような感覚に陥ったせいだ。
俺は余計なことを考えないように、携帯をいじって外を見ないようにした。