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△ Campus Life

第14章 Witness


あの海の日から何かがおかしい。

ニノはいつもどおり、に見える。
でもいつもどおりがパターンに入りすぎてて居心地の悪さがある。

小雨は明らかに何かを隠している。
長年一緒に生活していて分からないはずがない。
あいつは隠し事が苦手だし、嘘もつけない性分なんだ。

3人で過ごす時間は決して大きく減ったわけではない。
でも、それでも、俺だけが取り残されたような、変な感覚。



ピピピピ ピピピピ ピピピピ



日曜日。
ゆっくり起きていい日なのに、目覚ましを止めてから二度寝に入れない。
仰向けのまま手探りで目覚ましを止め、その体勢のまましばらく何もない天井をボーっと眺めた。

浮かび上がるのは小雨の顔。
笑ったり、しょぼくれたり、悩んだり、怒ったり。



『お前は俺の大事な…』
『大事な…?』



ふと海での出来事が頭をよぎった。
俺はあの時、なんていうつもりだったんだろう…。



『んぁー…好き、とかそう言うんじゃない気がすんだよな。』



『まぁ、幼稚園からずっと一緒って言ってましたし、兄妹みたいな感覚が先に来ちゃうんでしょうね。』
『そうなんだよね。だから小雨と恋愛してるところは想像できない。』
『でも彼氏ができるのは見過ごせない、と。』



糸を辿っていくように、どんどん記憶が呼び起こされる。
俺にとって小雨は…



『じゃあ、俺がもらっていいですか?』



「ダメだ。」



急にニノの意地悪い笑みが目の前に浮かび、俺はそれを掻き消すようにハッキリと口にした。
そしてまた、瞬時に後悔する。



「『うわ、俺…何様だよ…。』」



海の日から、俺はずっとこのループを繰り返していた。
モヤモヤとした出口の無い霧の中をずっと彷徨い続けている。



「んぁ~!ダメだ!出掛けよ!」



俺は勢い良く布団を剥ぎ、手早く支度を済ませた。
チラとベランダに目を向ける。
カーテンを開けて隣のベランダの方を見るが、そちらもカーテンが引かれていた。



「ま、休みだし…まだ寝てるよな。」



俺はサッとカーテンを閉め、ズボンのポケットに財布と携帯を入れると外に出た。
どこに行くかは決めてなかった。
考えながらとりあえず駅の方へ足を進めてみる。



「あ、そうだ新譜。」
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